〜マルチエフェクターの中の70年代〜
マルチエフェクターの中に簡単なレスリーシュミレーターが入ってたりします。ZOOM MS-50Gなどの場合はRoto Closetと言う名前(機種によって名前が違ったりする)。Roto というのはRotor(回転するもの)の略で、ロータリースピーカー、つまりレスリースピーカーの音をシュミレートするモノです。Closetというのは、レスリースピーカーの筐体は木でできていて洋服タンスみたいな風情なのでそんなネーミングになっているのでしょう(笑)
本格的なレスリーシュミレーターはもっと細かい設定ができますが高い。使う頻度を考えるとコスパ悪いです。そういう面で、ZOOMマルチエフェクターのRoto Closetは非常にありがたい逸品です。簡単な設定しかできませんが、これでも十分効果があります。むしろシンプルで使いやすかったりします。
レスリースピーカーをギターに。
レスリースピーカーとはなんぞやという話はこちらに書いているので見ていただくとして、これをギターにどう使うのかというのは70年代に事例があります。というより一時期流行したのです。といっても、エリッククラプトンとかジェフベックとかそのレベルの人達ですが。レスリースピーカーは高価な装置ですし大きくて重いものです。アマチュアが使うにはハードルが高すぎました。また、当時はまだフェイズシフターすらなかった時代で、レスリースピーカーのような効果を得るには、それを使うしかなかったのです。
有名なのは、エリッククラプトン(Cream)のBadgeでしょう。後半のサビの部分のギターのあのギラギラして捻れたような音はレスリーならではのものです。とてもカッコよくて印象的です。ハモンドオルガンに使うのとは、またちょっと違うんですよね。ジェフベックは、第二期ジェフベックグループのアルバムの中で何カ所か使っています。分かりやすいのはI’ve Been usedやShort Businessです。イントロからレスリーがかかっています。ちなみにベックはライブでは使っていません。
フェイセズ時代のロンウッドもレスリーのスピードを速くしたような音を出していましたが、当時同様の効果を出す装置はなかったと思うのでレスリーを通していたのではないかと思います。またジミーペイジのGood Times Bad Timesのソロの音はレスリーではないでしょうか。
レスリーの代役。
レスリーの効果をもっと手軽に表現できないかと生まれたのが、実はフェイズシフターです。しかし、フェイズシフターとレスリーはちょっと違いますよね。それでフェイズシフターはフェイズシフターで別の進化をして行きました。いまでは別物としてポジションを持っています。
コーラスアンサンブルが生まれ、フランジャーが生まれた頃に、レスリーシュミレーターも生まれたと思います。レスリースピーカーの特徴は、低音部のスピーカーは固定され、高音部のスピーカーがぐるぐる回転していることです。これによる独特の効果の再現がなかなか難しいわけですね。物理的に音をまき散らしているわけですから。それと独特の歪みがあってこれがまた音を太くしてざらっとしたトーンをつくっています。なので、単体のレスリーシュミレーターはいろんなことが設定できるようになっています。しかし、そういうことをズバッと絞ってあの3つのツマミに集約したZOOMさんは偉いと思います。レスリーシュミレーターは、コーラス的な効果も(というか元々レスリーはそういう効果を狙ったモノ)ありますので、コーラスエフェクトの音だと普通すぎる、ちょっと違うコーラス効果が欲しいという天の邪鬼なギタリストにも良いかも知れません(笑)
設定
設定項目はRoto Closetの場合、Bal(高域、低域のバランス)、Mode(回転スピード)、Level(出力レベル)、Drive(歪み)のたった4種類。Levelはボリュームなので、正味3ヶ所だけです。でも、これでも充分な効果が得られます。ペダルのつくタイプでは、ペダルでスピードの切替ができます。Driveである程度歪みが入れられますが、この後に歪みエフェクターを入れると低域がぐじゅぐじゅな感じになり、よりロックのレスリーっぽくなります。理想的にはこの前にもブースターを入れて調節するとより好みの音が作れると思います。
回転スピードは、Roto Closetの場合、Fast・Slowのどちらかしか選べませんが、ペダルがあるマルチの場合はペダルでスピードの切替ができ、スピードを変えると徐々にスピードが変わるあのレスリー独特の感じも実現します。これがうれしいところです。
使い方。
特にこうでなくてはならないということはないので好きに使えば良いと思いますが、やはり和音に使った方が効果があると思います。分散和音(アルペジオ)やゆったり流す和音などが分かりやすいと思います。クラプトンのBadgeなどは効果的に使った見本みたいな演奏ではないでしょうか。
回転数を速くするとFaces時代のロンウッドのような音になります。晩年のジェフベックもスピードを速くして使っていましたがあの意図は良く分かりませんでした。
また、ギターの話ばかりしていますがキーボードにも効果的です。オルガン系の音はもちろん、ピアノやクラビネットにもカッコイイんじゃないでしょうか。フェイズシフターともフランジャーとも、コーラスとも違う、レスリーシュミレーターは秘密の空間系(笑)
●Sample:Badge風というかBadge(前後に歪みを入れています)
●I’ve Been Used(Jeff Beck Fan.netのコンテンツから)
●ロンウッド風
●スピードの変化
マルチストンプは、小さいながらひとつもっておけば、ドラえもんのポケット!
★レスリー効果の醍醐味を実現するには、ペダルでのスピードコントロールが必要。