ロック黎明期から今日に至るまで、ロックミュージシャンの靴と言えばDr.マーチンでしょうという話。

60年代
ロックとファッションは常に連動しています。というか、ファッションの一部に必ずロック的モードのテイストがあり、何らかファッショへインスピレーションを与えています。
古くは、ロカビリースタイルから、60年代はモッズ。モッズの頃からがいわゆるロックの黎明になります。ビートルズのデビューにあたってマネージャーのブライアンエプスタインが、デビュー前は革ジャンにリーゼントだったビートルズをこぎれいなジャケットスタイルに揃えたのは有名です。ビートルズと言えばあのスタイルですね。
同時期にザフーやロッドスチュアートなどがいわゆるモッズスタイルでした。細見のスーツ、ベスパに乗る、フレッドペリーのポロシャツを着るみたいな感じですね。直線的なグラフィックもモッズスタイルの特徴かも知れません。同じ時期にバイクを乗り回すロッカーズというスタイルもありました。
70年代へ
ロックは、その後、アメリカの反戦&フラワームーブメントに触発されてサイケデリックになっていきます。LSDの幻覚を表現していると言われる歪んだ曲線のブラフィックや花柄、ペイズリーなど、ちょうど2024年の今でもレトロブームでファンの多い柄などがあふれていきました。
それと同時にエレクトロニクスの発展のイメージを膨らましたかのようなグラムロックのスタイルも台頭してきました。今で言うビジュアル系で、独特の衣裳や化粧に凝るみたいな感じです。T-REX、デビッドボウイなどが分かりやすいですが、見た目だけでなく音楽のスタイルそのものも非常に個性的で音楽とルックスが一体となっているようなロックでした。
T-REXの「ボランズブギ」と言われる独特のギターのリフは、今聞いてもカッコイイです。デビッドボウイはその後の活躍で説明するまでもないと思います。しかし、グラムロックは比較的短命に終わりました。しかし、マインドはその後のビジュアル系に受け継がれていると思います。

ロックもポピュラーに
70年代後半になるとロックも成熟してきて、音楽の中で確固たる地位を築いていました。ヒットチャートにはロックの有名曲があふれポップスと互角にポピュラーになっていました。
成熟するというのは同時に行き詰まってくることでもあります。そんな中、バンヘイレンが誰も聞いたことのないギターでデビュー。よりキャラクターやサウンドのまとまりがきちっとした音楽が好まれるようになり、いわゆる産業ロックが生まれてきました。
産業ロックの到来、そしてダンスミュージック
ジャズフュージョンなどとの融合(まさにフュージョン)も多様化し、TOTOやジャーニー、ボストンが生まれ、世の中はより産業的になり、ダンスミュージックが台頭してきます。
それにつれてファッションもダンスやディスコ的なスタイルがトレンドになり、かつてのブールージーないわゆるロックのスタイルは、古くさささえ感じるようになりました。
煌びやかできれいなものが好まれるようになりました。そうなるとまたカウンタースタイルがでてきます。それがヒップホップです。
ダンススタイルながら、ダーティでルーズなモード。80年代初頭の映画「フラッシュダンス」で一躍有名になったニューヨークのヒップホップカルチャーは、世間にダンスやダンスミュージックを広めました。それとともにファッションもそういうスタイルがトレンドに。

この時に注目されたのが、スクラッチです。もともとレゲエのトーストと呼ばれていた手法をひとつの演奏スタイルにまで高めたてカルチャーを形成するまでになりました。N.Yだけでなく、ロンドンのキングスロードを中心にマルコムマクラーレンやブティック「ワールドエンド」のヴィヴィアンウエストウッド(当時はマルコムの奥さん)が新しいムーブメントを起こします。それがパンクでした。マルコムマクラーレンは、斬新なヒップホップを生産すると同時にセックスピストルズをデビューさせます。ここからパンクブームが世界を席巻します。
こうやって、カルチャーが多様化する中で、かつてのギター中心のロックはもうメインではなくなってきました。80年代にジェフベックは「もう俺の出る幕はない」と言っており、1989年の「Guitar Shop」を最後に10年間アルバムを出していません。
ロックの復活
この間にヒップホップの第二世代とも言うべきRUN.DMCとエアロスミスのコラボで「Walk This Way」が大ヒットし、エアロスミスという昔のロックスターが復活してきます(RUN DMCの靴はアディダスですが)。
人々の嗜好が多様化し、音楽もファッションも多様化してきて、ひとつのトレンドが世間を席巻するというようなことが少なくなってきました。これには、情報化社会ということが大きく影響していると思います。いろいろなメディアが生まれて情報を共有することが広まり、人々の発想も多様化するようになりました。
その後は、音楽もファッションも多様化の一途を辿り、インターネットが生まれて情報の共有多様化に拍車がかかりました。かつては、トレンドファッションを身につけていなければ時代遅れに見えましたが、今は全然そんなことなく、自分の好きなファッションを楽しめる時代です。
最新の音楽も大昔の音楽も同じレベルで好まれ、昔の音楽やファッションを再生リメイクしたり融合させたりとクリエイティビティを発揮できます。
Dr.マーチンの靴
そんな時代の変遷の中にあって、ロックと切り離せないのが「Dr.マーチン」の靴です。もともとは、第二次大戦で怪我をした兵士の足の負担を和らげるためにその名もずばりクラウス・マーチン博士が患者さん向けに開発したソフトクッション靴です。それが労働者の足にもよいと言うことでワークシューズとして広まっていきました。

60年代のモッズは中産階級、ロッカーズは労働者階級のカルチャーです。ロッカーズは、普段から履いている靴だったわけです。
Dr.マーチンのソールは少し分厚くゴツイです。この靴を最初に履き始めたのはThe Whoのピートタウンゼントだと言われていますが、ロックとテイスト的にぴったりだと思ったのでしょう。
ファッションブランドとのコラボ
音楽だけでなく、80年代のDCブランドブームでもDr.マーチンはシューズブランドのひとつとしてしっかり存在していました。コムデギャルソンを始めデザイナーブランドからの特注商品も盛んに作られました。コムデギャルソン、ヨージヤマモトといった最も革新的だった当時の2大ブランドの真っ黒の服にもDr.マーチンはピッタリだったのです。ちなみに、90年代のコムデギャルソンのショーにエドガーウインターがモデルとして出演したことがあります。
そして、いわゆるゴツさを活かしたファッションだけでなく、ガーリーでファンタジーな女の子のかわいいファッションにもDr.マーチンは不思議とマッチします。いまはデザインも多彩になりました。
ベーシックなDr.マーチンは、普通の靴なのに普通ではないムードがあります。Dr.マーチンを履いているだけで、なんだかロックな感じ。おまけにDr.マーチンの一番の売りであるエアクッションソールは歩きやすい。ナイキエアが出る何年も前からエアクッションです。
なんでしょうね。ロックの黎明期から今日まで、Dr.マーチンは常にロックな靴の代表です。カントリー、ジャズ、フォーク、クラシック、ラテン・・・・どれにも必ずしもDr.マーチンはフィットしない。
もうロックファッションの一部になっていますね。黒の革ジャン、履き古したスリムなブルージーンズ、そして足にはゴツイDr.マーチン。ロックの典型スタイルではないでしょうか。
個人的にも20代のDCブランド時代から今でもDr.マーチンが靴のメインです。むしろ老いてからこそエアクッションソールは、足にもひざにも優しい。本来の使われ方です(笑)サイズは、27.5cmの足でJK9サイズにしています(Dr.マーチンのサイトにサイズの計測法があります)。夏のサンダルはひとつ大きめが良いかも。
ロックをやっていて、一度もDr.マーチンを履いたことのない人っているのか?と思うくらいミュージシャンに愛されていますね。履いたことのない人はぜひ履いてみて、60年代末のスウィンギングロンドンの熱い空気に思いをはせてみてください。



とにかく迷ったら、あるいは最初はまずこれ。履くだけでロックの匂いがプンプン。
大人気、 脱ぎ履きしやすいサイドゴアタイプ
最初は少し入口がきつい場合も。そのうち馴染むとフィット!履き心地抜群!!