マーククレイニーというドラマーを知っていますか?

ミュージシャン
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マーククレイニー(Mark Craney)というドラマーの名前を知らなくても、ジノバネリの「Brother To Brother」(1978年)のドラムというと知っているという人は多いのではないでしょうか。
ジノバネリは、いわゆるフュージョンっぽいサウンドに情熱的な歌が乗った、ある面ポップスなのですが、楽曲やアレンジが凝っていて、当時はスティーリーダンと比較されることもありました。参加しているミュージシャンがとにかく凄腕ばかり。この後のアルバム「Nightwalker」で、ビニーカリウタが注目されたことがありました。

で「Brother To Brother」で叩いているのがマーククレイニーと言う人。ただ、惜しいことに故人なのです。
このあと、ジェスロタルやジャンリュックポンティなどの演奏に参加。1990年代にはエリックバードンのバンドでプレイしたようですが、糖尿病と肺炎の合併症で53歳で亡くなっています。ジェスロタルなどのアルバムでは、地味にツーバスを踏んでいるところなども渋いです。
ジェスロタルの「A」や「Black Sunday」にも参加しているようです。

マーククレイニーのドラムが堪能できるのはなんと言っても「Brother To Brother」。のっけから、ワクワクするドラミングが聴けます。この人はいわゆる手数系のドラマーで、ツーバスです。この人の特徴は、いろんな隙間に絶妙に手数フィルをねじ込んでくるところです。フラムもカッコよく入れます。ジノバネリのダイナミックな曲調にそれが見事にマッチして、非常に緊張と緩和のある演奏になっています。当時流行した小さいタムやリミッターのかかったようなスネアの音、タムも裏側を抜いているのかのような音(これも流行しました)。この人のツーバスは、派手に使わないところです。気付いたらツーバス、そんな感じがまた渋い。

テーマ曲の「Brother To Brother」も凄いですが、個人的には1番目の「Appaloosa」がテンション上がります。独特のハイハットの音や当時流行っていた小さいタムのフィル、そしてツーバスなど、聴き所がふんだんに詰め込まれています。そしてこういうハードな演奏だけでなく、ヒット曲でもある「I Just Wanna Stop」のような間のある曲でも絶妙な空間を作ります。

ドラムを中心に書いていますが、このアルバムは、ギターのカルロスリオスのプレイも抜群です。ピアノやキーボードもバッキングも随所にカッコ良いのがあり、そして、そもそものジノバネリの曲や歌、コーラス、アレンジもどれをとっても素晴らしく完成度が高く名盤のひとつだと思います。ジノバネリは、兄弟バンドで、凝った音楽をつくるのですが、ボーカルのジノバネリは、西城秀樹のように踊りながら歌う歌手然としたボーカリスト。不思議なバンドです。ライブでも同様の凝った演奏をしていました。

<「Brother To Brother」独断と偏見による紹介>

Appaloosa
先に書いていますが、普通の16ビートのハイハットですが、なぜかカッコ良い。隙間にねじ込んでくるタムのフィルやスネアが快感。カルロスリオスのギターもかっこいい。重厚なコーラスも迫力。と、頭からお腹いっぱいになる曲です。

The river must flow
お腹いっぱいになったところで軽快なリズム。パーカッションもあってめっちゃノリの良い曲です。カッコ良い曲を作るなあという感じです。カルロスリオスのソロもカッコ良いです。

I just wanna stop
ミドルテンポの美しいバラードです。ヒットチャート入りした曲です。ドラムの実力はバラードで出るという持論ですが、このテンポのリズムの空間をドラムのフィルが心地よく埋めてくれます。前のめりに流れていくようなバスドラの入り方も心地よい感じです。

Love and emotion
16ビートでグイグイ迫ってくる感じの曲です。カルロスリオスのソロが熱い。当時流行ったハイハットのオープンとクローズとスネアの組み合わせのフレーズやフラムでカッコよく迫ります。

Feel like flying
ミドルテンポのホッとするような隙間のある曲。その空間にスコーンとタムのフィルが入ってくるのが気持ちイイ。ハイハットってドラマーの個性が出ると思いますが、この人のハイハットのオープン&クローズのタイム感が個人的に快感です。

Brother to brother
タイトル曲で、この曲が有名だと思います。ドラムをフィーチャーした曲と言っても過言ではない。速いテンポで込み入った曲が展開します。小気味よいハイハットにフラムの効果的なスネアアクセント、空間にねじ込んでくる手数フィルなど、この人の個性が炸裂しています。後半のベースとの掛け合いはもう圧巻です。

Wheels of life
激しい曲の後には、ほっとする曲が配してあります。それにしてもジノバネリの曲は、どれもドラマチックに展開します。楽器の使い方が効果的なのでしょうか。

The evil eye
Appaloosaもこの曲もハイハットの音が独特に聞こえるのですが、音楽仲間のプロのドラマーにその話をしたら「普通にニュービートとかじゃない?」とは言っていました。録音の仕方によるのでしょうか。音の空間にピアノのバッキングが冴えます。

People I belong
このアルバムには似たようなミドルテンポのバラードが3曲ほどあってそのひとつ。どれもドラマチックで、転調などで場面が心地よく変わります。その空間にタムのフィルが心地よく入ってくる。ホントに惜しいドラマーをなくしました。


「Imaginary Voyage」Jean-Luc Ponty
フランスのフュージョンバイオリニスト、ジャンリュックポンティのアルバムで、マークの心地よいドラムが聴けます。タイトル曲のImaginary Voyageでは、カッコよくツーバスを踏んでいます。これは1976年のアルバムで、ジノバネリ以前。

「A」Jethro Tull
70年代初頭から活動する、フルートをフィーチャーした独特のプログレバンド。メンバーはいろいろ入れ替わっている。マークは、このアルバムがつくられた1980年ごろに在籍していた模様。


マーク自身が叩いている貴重な映像。
ジェスロタルのツアーから
Imaginary Voyage(Jean-Luc Ponty)
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