ローリングストーンズにロックンロールの本質を見る。

ミュージシャン
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ローリングストーンズは何が凄いか。

ロックという音楽の世界でこれほど長く活動しているバンドはないのではないでしょうか。
1962年の結成からもう50年以上、そして、常に第一線で活躍しているトップバンドであるというところが、本当にすごい。加えて、ミックジャガーとキースリチャードというコアメンバーは、結成時から変わっていないところもすごい。さらに、なんといっても凄いのが、初期と今とやっていることが基本的に変わっていないということです。また、メンバーだれ1人として、演奏や歌が特別上手いわけではないというところです。
もちろん、それぞれに独特の個性を持っていて、存在感があるのですが、演奏や歌の技術的に特別上手いわけではない。しかし、ミックジャガーのような歌手は他にいないし、キースリチャードの刻むリズムも他にはない。ロンウッドもフェイセズ時代から独特のギターを弾いています。亡くなったチャーリーワッツは、ドラマーにとってのひとつのカリスマでした。サイレントストーンズと言われたビルワイマンも然りです。
そして、カッコイイ。でもイケメンというわけではないし、すらっと背が高いわけでもない(イギリス人だから)。しかし、とにかく存在、立ち居振る舞い、生き方、すべてに於いて「カッコイイ」わけです。このあたりに、ロックあるいはロックンロールの本質があるように思います。逆に、イケメン過ぎたり、上手すぎると、そういう得体の知れないカッコ良さにはならないのではないでしょうか。
ロックが生まれて長い歴史の中で、流行が移り変わる中で、AORや産業ロック、パンクにもデジタルミュージックにもダンスミュージックにも負けずにオーソドックスなロックンロールをやりながらトップにいるというのは奇跡に近いのではないかと思います(もちろん綿密なマーケティングあってのことでしょうが)。個人的には、Honky Tonk Women、Satisfaction,Start Me Up、ストーンズのイメージはこの3曲です。この独特のリスムというかグルーブ感。こんなシンプルなことなのに、なんでこんなにカッコイイのかと不思議です。

ローリングストーンズとビートルズ。

ストーンズは、よくビートルズと比較されて「ビートルズはよい子でストーンズは不良」みたいに言われますが、実際は違うそうです。ストーンズのメンバーは、いわゆる英国の中流階級の家庭の出身で、ビートルズは労働階級だそうです。
ビートルズもデビュー前の写真等を見るとかなり不良っぽいですが、デビューさせた有名なマネージャー、ブライアンエプスタインが、不良っぽいカッコをやめて、こぎれいなスーツ姿でデビューさせました。このブライアンのセンスというかマネージメントが功を奏してビートルズは「良い子バンド」として大ヒットします。音楽もポップなメロディで名曲を生み出していったのでそのイメージが固まっていきました。

ストーンズは、デビュー以来ずっと黒人音楽をベースにしたスタイルなので、ある面、ポップとは対極にある音楽です。そのため、「不良っぽい」イメージですが、そんなイメージや音楽なのに、50年以上トップでいられるという理由は何なのでしょう?

メンバーについて

当初リーダーだったギターのブライアンジョーンズが、ドラッグやメンバーとの不和で脱退し(3年後に謎死)、その後、ギターにミックテイラー、ロンウッドが入れ替わり加入して現在に至ります。ロンウッドが加わったのは70年代だから長いですね。ロンウッドは、自伝によるとジェフベックベックグループ以前からミックとは親しかったそうです。ロンドンの音楽仲間だったのでしょうね。ロンウッドは、ストーンズのカラーにピッタリですね。その前のフェイセズもある面ストーンズみたいなロックンロールベースのバンドだったし、ロッドスチュアートという個性的なボーカルと対のギターという面でも似ています。ミックテイラーが加入したのは個人的には意外な感じがします。ミックテイラーは、クラプトン的な堅実に弾くブルースギタリストで、ストーンズのカラーには合わないような感じでした。ギターが正統派過ぎて上手すぎたのではないでしょうか、知らんけど(笑)。だからかすぐに脱退しました。
ミックとキースは、なんと幼なじみだったそうです。幼なじみが同じバンドで、じじいになっても世界のトップを走っているというのも凄いですね。ジェフベックとジミーペイジの上を行ってます。

チャーリーワッツ(ドラムス)

チャーリーワッツは、ドラマーにとってある種の神です。淡々とリズムを刻むだけですが、それが神がかっている。元来ジャズドラマーだというチャーリーは、ジャズドラマーとしてのソロアルバムも出しています。が何十年もストーンズのドラマーをやっているのも不思議です。しかし、スネアを叩くタイミングでハイハットのスティックを上げる(音を抜く)独特の叩き方やグルーブで別格の存在でした。

ビルワイマン(ベース)

地味に見えるビルワイマンは、実は多彩な人でオールラウンダーだったそうです。実際、ソロアルバムも数枚出していて、楽器もベース以外に複数こなし、歌も歌います。ちなみに第二期ジェフベックグループのべーシストクライブチャアマンもグループ解散後は、ソロアルバムを出して作曲から歌、あらゆる楽器を演奏しています。似ていますね。ビルワイマンは、「ストーンズではリズムを支えることに徹する」と言っていたそうです。

ロンウッド(ギター)

ロンウッドは、一般的に知られていないと思いますが、ジェフベックグループのベーシストでした。ちなみにロッドスチュアートもメンバーで、ジェフベックグループの後に共にフェイセズを結成しその後ストーンズに加入します。ロンウッドの引きずる様なギターも独特で、立ち居振る舞いも含めて加入当時から元々ストーンズに居たかのようです。先にも書いたようにミックとは古い付き合いだそうですし、そういう面で違和感はなかったのでしょう。

キースリチャードとミックジャガー

このコンビは、ロックンロールバンドのテンプレートになっています。なんか不良っぽいボーカルとギターが、フロントでやんちゃに歌って、ギターを弾いている、そんな姿も「カッコイイ」の基本なわけです。ロックの黎明期にそういうスタイルを確立してきたのが未だに揺るぎないのは、やはりロックという音楽の中で、ボーカルとギターという存在が、象徴的だからではないでしょうか。エアロスミス、バンヘイレン、レッドツエッペリン、ジェフベックグループ、クイーンもそうですね。などなど、ロックバンドは、ボーカル&ギターなのです。そのあたりも、グループ全体でコーラスをして歌うビートルズと比較される点ではないでしょうか。それだけ、ロックという音楽の中でギターの存在は、それまでの音楽の中ではあまりなかったような存在感をつくったと言えるかも知れません。
ミックは、決して上手いボーカリストではないでしょう。しかし、唯一無二の個性で、多くのボーカリストがミックの真似をしてきました。キースも決して技巧派のギタリストではないですが、あのサイドギターのリズム感がストーンズのベースを作っていると言っても過言ではありません。ロックが誕生してからは、ギタリストは、ガンガンギター-ソロを決めるタイプがスターになっていきましたが、キースのような存在は珍しいです。

ジェフベックの不思議

ストーンズの話になぜジェフベックが出てくるのか不思議に思うでしょうが、ミックジャガーのジェフベック好きは、ある筋では(笑)有名です。過去にことあるごとにベックをストーンズに誘っていました。
彼らはもちろん古くから顔見知りでしょうし、元ジェフベックグループのロンウッドが加入してからは、関係性も深くなっているはずです。1985年ついにミックジャガーの初ソロアルバム「She’s The Boss」にジェフベックが参加します。次の「Primitive Cool」では当時のジェフベックバンドのリズム隊(サイモンフィリップス、ダグウィンビッシュ)をベースにミックが入ってソロアルバムをつくったようなメンバー構成です。ここでは、あくまでミックジャガーの世界観ながら、ジェフベックらしい演奏が聴けます。
そしてその頃、ジェフベックはまたもやストーンズに誘われ、「ふと気が向いて」(本人曰く)アムステルダムまでストーンズのセッションに出向いたのですが、「退屈極まりなく途中で帰ってきた」(本人談)ので結果的にストーンズには加わりませんでした。そのセッションの海賊盤が出ていますが、ずっとレゲのサイドギターが聞こえるのですが、いつまで聴いていてもベックのギターは聞こえません。これがベック?といった状態でした。それから30余年、ストーンズの50周年記念ツアーのある日、ゲストでジェフベックが出演し、ゴーイングダウンなどを演奏しました。その時のキースリチャードの所在なさが印象的でした(笑)

ロックンロールとは

ストーンズの音楽は「ロックンロール」だと言われます。しかし、チャックベリーなどのロックンロールとは少し違います。元来のロックンロールの定義も曖昧ですが、白人音楽のヒルビリー(カントリー)と黒人音楽のブルースが融合し、ロックンロールやロカビリーが生まれました。
Rock and Rollという言葉は、黒人のスラングで性交を表す言葉だそうで、ロカビリーは、ロックンロール&ヒルビリーが融合したものでしょう。ロックンロールとくらべてよりカントリー色が強いのがロカビリーで、演奏面にも表れていて、ロカビリーギターはカントリー奏法がベースで、ロックンロールギターはブルース奏法がベースですね。で、ストーンズをロックンロールと呼ぶのはどちらでもなく、象徴的な意味合いが強いのではないかと思います。
ロカビリー、ロックンロールでもない新しい「ロック」という音楽が生まれました。しかし、ストーンズのように、あくまで黒人音楽を踏襲したような「ロック」はツェッペリンなどのまったく新しいロックとは区別されてよりオリジンに近いものとして「ロックンロール」と呼ばれるようになりました。フェイセズなども同様ですね。

同期のレジェンド

1960年代のロンドンという所は、何か不思議な力が働いていたかのように、ファッションや音楽に新しいものが生まれています。その時期に活動を始めたミュージシャン達が、ロックのスタートして頭角を現し、やがてレジェンドとなっています。
キンクス、アニマルズ、ビートルズ、ローリングストーンズ、レッドツエッペリン、ジェフベック、エリッククラプトン、ヤードバーズ、サフー、イギリスでデビューしたジミヘンドリックス、などなど、1960年後半から70年代に掛けて、イギリスのロックミュージシャン達は斬新なスタイルを確立していきました。
同年代のアメリカのロックスター達が、あくまでカントリーやブルースをベースに進化させたのとは少し違う、アメリカの土埃や汗臭さのない英国独特の洗練されたポップ感覚があり、それはその後のミュージシャンにも引き継がれています。そんな変化の中で、ストーンズは結成当初からの黒人音楽、ロックンロールやブルースを基本とした「ロックンロール」をやり続けていて、いわゆるニューロックのバンドが、結成解散を繰り替える中で、50年以上も同じスタイル同じメンバーでトップを走り続けてきたのは何なのでしょう。

ロックの本質とは

「ロック」という言葉の定義も時代と共に変わるところがあるのかも知れませんが、ここでいうロックとは、1960年代終わりから生まれてきたニューロックの時代のロックを指しますが、当時のロックの本質からすると、反体制でしょうし、その表現としての破壊ではなかったかと思います。
ロックギターの象徴が歪んだ音です。従来なら、雑音、ノイズとされた歪んだ音が、音楽の中心に据えられたという革命的な現象です。政治的背景などを別にして、音楽的な部分だけで見ると、ハイトーンのボーカルやミュートしたドラムなど、その他のパートにも従来にはない表現が生まれます。そういうことから比べるとストーンズの音楽というのは、斬新さとというのはないのです。むしろだからこそ、安定した人気があったとも言えるのかなとは思いますが、そんな短絡的な話でもないでしょうね。
ミックのビジネスマンとしての戦略志向や自己管理のプロイズムは有名です。そういったリーダーとしてのマネージメント力なのでしょうか。もちろんメンバーやステージ演出など視覚的なことやそもそも「ローリングストーンズ」というバンド名もカッコイイ。それとストーンズと言えば、あの赤い下のロゴマークを想起します。そういったいろいろなものが魅力を作っているし、逆にカッコイイからディティールがカッコ良く見えてくると言うこともあるでしょう。

とにかく「ワケもなくカッコいい」のがストーンズであり、逆に言えばストーンズのカッコイイ理由がちゃんと言えないというのが、本当のカッコ良さなのかも知れません。どこがカッコイイかは言えないけどロックンロールだ!みたいな(笑)
かつて韓流ドラマがブームの頃「冬のソナタ」の中のセリフで「本当に好きなときは理由が言えない」というのがありましたが、本当にカッコイイというのも理由が分からないものなのかも知れません。

それにしても、もう80前のじじい達が、広いステージを走り回ってロックンロールしているのが未だにカッコイイ(と思うのは僕だけか?)なんて凄いと思いませんか。

ビジネスとしても注目されるローリングストーンズ。

半世紀以上の間、トップで高収益を挙げているロックバンドというのは、ストーンズ以外にいないのではないでしょうか。そういう面で、ビジネス界からも注目されており、ウォールストリートジャーナルやフォーブスなどでも取り上げて「ローリングストーンズ」というある種のブランドの成功例としています(グレイトフルデッドも別の視点でマーケティングが注目されましたが)。
ただ、そういうのは概して後付けでいろいろ語られることであり、マーケティング的な戦略が当初からどのようにあったのかは不明です。とはいえ、レッドツェッペリンには、ジミーペイジのマーケティング戦略が最初からあったし、ビートルズがこぎれいなスーツ姿でデビューしたのもブライアンエプスタインの巧妙なマーケティング戦略があったので、ミックなどが感覚的にそういうことを行ってきたのかも知れません。
70年代にはドラッグや破天荒な素行などが有名なストーンズでしたが、ある時点からミックはそういったことと決別し、健康管理を徹底しているようで、来日時も日課のランニングを行っていたそうです。YouTubeにもミックのレッスンなどの風景が上がっていましたが、まさにプロの自己管理と言ったもので、ストーンズの破天荒なイメージとは真逆です。そういった管理や忍耐のようなものに支えられているのがストーンズの人気であるにも関わらず、結成当初からの破天荒で不良なイメージ—今となっては不良じじいなイメージ(笑)—を保っているのも凄いです。そこがストーンズの魅力であり損ねてはいけないイメージであるとして、ビジネスが組み立てられて管理されているのでしょう。その辺がマーケティング力やブランド管理的に語られるのではないかと思います。


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The Rolling Stones – Start Me Up 個人的にはストーンズと言えばこの曲。
The Rolling Stones & Sheryl Crow – Honky Tonk Women シェルルクロウがゲストで歌ってるのがまたカッコイイ!1989年にミックがソロで来日した時に1曲目がHonky Tonk Womenで、イントロが鳴り出した時のあの鳥肌が立つようなカッコ良さは何なのでしょう。
The Rolling Stones – (I Can’t Get No) Satisfaction ストーンズと言えばこれだという人も多いでしょう。たくさんのバンドにカバーされているリフがとても初期ロック的な曲。でも何十年経ってもカッコイイ。理由がない。
The Rolling Stones – Going Down – with Jeff Beck – live 2012 ストーンズに加わってもお構いなしのベック節が炸裂(笑)
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