最近音楽のドキュメンタリー映画がたくさん制作されています。こういう映画は、自分が聴いてきた音楽の背景が分かり、その音楽をより深く理解したり、エピソードなどでミーハー的な楽しさも生まれます。背景を知ることで今までさほど気に留めなかった曲に興味を持ったり・・・。
そういう音楽周辺のドラマを知ることはとても良い事だと思います。何より演奏者のマインドをより深く知り、曲の味わいが深まります。
映画の舞台
60年代後半から70年代初頭にハリウッドからほど近い丘に才能あるミュージシャン達が住始めました。メインストリートに近いにも関わらず、自然豊かで静かで眺めも抜群だったようです。近所に住んでいるおかげでお互いに普段から交流が生まれ、それが化学反応して新しい音楽が生まれていったようです。さらにその噂を聞きつけた才能ある若者が集まり交流することで、いわゆる70年代のウエストコーストサウンドと言われる「フォークロック」が生まれていったようです。
映画ではBuffalow Spring Fieldが生まれる頃の話から始まり、イーグルスの誕生くらいまでの期間の物語が本当にいろいろ紹介されます。
ヘンリー・ディルツ、ジャクソン・ブラウン、ジョニ・ミッチェル、デヴィッド・クロスビー、グラハム・ナッシュ、スティーヴン・スティルス、ニール・ヤング、ロジャー・マッギン、ドン・ヘンリーなどが登場しエピソードやその時の想いなどを語ります。
当時の音楽状況
イギリスからビートルズが来たことでアコースティックギターによるフォーク中心だったアメリカの音楽家達にエレキの概念が生まれます。そこからアコギの世界にエレキが融合されてフォークとロックが融合した「フォークロック」という概念が誕生したそうです。
日本のロックで革命だったといわれている「はっぴいえんど」はCSN&Yの前進であるBuffalow Spring Fieldをモチーフにしていると言われていて「はっぴいえんど」も日本におけるフォークロックの先駆者ではないかと思います。
「ローレル・キャニオン」「レジェンドオブキャニオン〜CSNの世界〜」はよく似た内容(部分的に映像素材も同じ)ですが、前者は全般的な内容で、後者はサブタイトルに「CSNの世界」とあるようにCrosby Stills nash & Youungに焦点を絞った内容です。これからも分かるように、CSN&Yは、ウエストコーストサウンドの流れの重要な位置にいたと言うことではないかと思います。実際「フォークロック」という言葉はCSN&Yをカテゴライズしたときから生まれていたように思います。
トピックス
個人的に印象深かったのは、ジョニミッチェルが住み始めたときに、彼女の演奏や歌、曲作りなどを見て、その才能に周囲が驚愕したという話です。その驚愕していたのが後のレジェンドばかりなので、ジョニミッチェルがいかに凄かったのかと言うことではないでしょうか。
ママス&パパスのキャスエリオットは界隈の世話役的存在で、みんながキャスのもとに集まっていたようです。ロンドンでのロンウッドの立ち位置と似ている気がしました。
CSN結成に至ったきっかけになった曲が意外な曲だったり、ジャケットの写真撮影のエピソードなど興味深い話が満載です。エリッククラプトンがなぜママス&パパスに参加したのかも分かる。ジェニミッチェルのチューニングにクラプトンが寒心していたという話も面白いです。
CSN&Yは個性的な人ばかりが集まって良くバンドとして上手くやっていられたものだなと思っていたら、やはり実はメンバー間の衝突がしょっちゅうあったそうです。そりゃそうでしょうね。
またこれら西海岸のミュージシャンとビートルズなど英国のミュージシャンの交流が結構あったのも意外でした。
——-2024.9.9に公開された映画「セッションマン」を見ると英国のニッキーホプキンスなども西海岸のミュージシャンの録音に多数参加していました。ウッドストックをジェフベックグループがキャンセルしたので、ニッキーはジェファーションエアプレインのステージに参加していたそうです。———–
「レジェンドオブキャニオン〜CSNの世界〜」では、CSNに英国のグラハムナッシュがなぜ参加したのかも合点がいきます。
個人的な謎
このようにこの丘に住んでいた当時の才能たちのドラマが分かるわけですが、少し謎だったのが、同時期にキャロルキングもこの丘に住んでいたはずなのにキャロルキングのキも出てこなかったことです。
キャロルがたくさん曲を提供していたモンキーズの話は出てくるし、キャロルの自伝ではデビッドクロスビーと親しくしていたことが書かれているのに、デビッドの話にもまったくキャロルは出てこない。ジャクソンブラウンは詳しく出てくるのにジェームステイラーもまったく出てこない。と言う謎がありました。
とはいえ、聞き馴染んできた音楽の興味深いエピソードが満載で、この手の音楽が好きな方は楽しめる内容でした。同時期を生きていた昭和のロック世代にはとても楽しめる内容です。
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「ローレル・キャニオン」