〜マルチエフェクターの中の70年代〜
ロックギターの歪みとは。
1966年は歪みの誕生年?
歪んだエレキギターの音が使われ始めたのはRock創世記からです。と言うよりもエレキの歪んだ音こそがRockを生んだという方が正しいと思います。
一般的には、1966年頃にジョンメイオールとブルースブレイカーズに加入したエリッククラプトンが、ギブソンのレスポールをマーシャルに繋いで歪ませた音が起源だと言われています。しかし前年に発売されたローリングストーンズの「Satisfaction」ではファズか何かのディストーションのギター音が使われているので、おそらく同時多発的にそういう試みはされていたのでしょうが、ブルースブレイカーズのアルバムがリリースされて音として定番化されたということではないかと思います。ジェフベックもヤードバーズの頃にレスポールを使い始めたのは「エリックが使っているのを見て」と言っていました。それ以降、レスポール+マーシャルの歪みはロックの定番になっています。
ちなみに1966年はジミヘンドリックスがイギリスでデビューしているので、そこでも「歪んだ音」やそれによるフィードバックなど従来にはなかった奏法や効果が披露されています。同じ年にミケランジェロ・アントニオーニ監督の映画「欲望」の中で、ヤードバーズのジェフベックが歪んだ音とフィードバックによる演奏「Stroll On」(中身はTrain Kept A Rollin’)が使われています(映像と音は別だった)。
こうしてみると1966年は、ロックの「歪んだ音」が確立した年なのかも知れません。それ以降「歪んだ音」はRock音楽の基本として脈々と受け継がれています。
果てしない歪み道
エフェクターの中でも歪み系ほどこだわりや好みが奥深いエフェクターはないのではないと言えます。60年代にFuzzやTone Benderが生まれて以来、いったいどれだけの歪みエフェクターが作られてきたでしょうか。しかし、結局100%満足するものはないのです。できないのではなく100%満足という状態がないものなのだと思いますし、時と場合によっていろいろな歪みが好まれるということもあるだろうし、それ以上に歪んだ音というのは、クリーン音より演奏の表情が出やすい分、味わいも深いということではないでしょうか。
それだけに歪み音についてはいろいろな人がいろいろな意見を持っていると思います。それだけに楽しいものでもあります。自分の好みの歪みで弾けたときには、とてつもない快感がありますしね。
歪み系のエフェクター
歴代の有名な歪み系のエフェクターは、人気ギタリストが使用し、あるいは有名な曲の印象としても残っていたりします。マルチエフェクターには、そういった名機をモデリングしたエフェクトが多数入っていて楽しいです。
逆に目移りしてひとつに決められなかったりします。ただ、マルチ内蔵のエフェクターは、実際のコンデンサーや抵抗を物理的に電気信号が通っているのではなく、ソフトウエアで処理したものなので、それによるクセみたいなものがあるように思います(あくまで個人の感想)。それが良く言われる「デジタル臭さ」「マルチ臭さ」という事なのかも知れませんが。
そこでそういった事にも考慮しながら、せっかく入っている名機を使ってOld Rockな歪みを作ってみようという考察です。その「マルチ臭さ」というのが具体的にどういうものなのかよく知らないのですが、特に70年代ロックのような骨太の音を求めるとガツンといけない感じがあるのかも知れません。
マルチエフェクターで歪み作り
Rock的歪み音の要件
ロックの歪みを作る場合、個人的には3つ要件があります。
(1)充分な歪みがあること
(2)ギターのボリュームを絞ってもクリアに弾けること
(3)バンドの中で音が埋もれないこと
ライブで演奏する場合は(3)はとても重要です。
2〜3段階で歪みを作る
この方法は、やっている人も多いのではないかと思いますが、歪みを単品でつくるのではなく2〜3段階で作るやり方です。
別の記事でも少し触れていますが、ブースターやEQなど音質調整系のエフェクトと歪みをつなげて2個でひとつのエフェクターと考えるやり方です。これは、音質調整系に使うモノとその後の歪みに使うモノの組合せ、さらにその設定によって、無数の音色が得られます。歪みというのは元来アンプで作るのが一番良いわけですから、つまりこの2つを使ってアンプ的歪みを作ると言うことです。
三段階でつくる場合の理由は、音を整える、ブーストする、歪ませるの3ステップで作るわけです。
そうすることによって音色や歪みを調整しやすいからです。また、単体のエフェクターでこれをやると接続するケーブルでノイズを拾ったりしますが、マルチなら物理的なケーブルがないのでノイズを呼びません。文字通りひとつのエフェクターとして機能する感じです。
1番目にZ-Cleanを入れたいところです。ここで埋もれない音をつくりたい。
2番目にBoosterをいれて音を頑丈にします。これでギターのボリュームを絞っても甘くなりにくい音になるような気がします。
3番目に歪みです。うもれにくく、ふやけにくくなった音に歪みを足すってイメージです。さらに細かく考えるなら一番目にEQを入れると良いのかも知れません。
ただし、MS-50Gは設定できるエフェクトは6つなので半分以上を占めてしまうことになります。MS-50Gを使う場合、他にもエフェクターを繋ぐ可能性が高いので、順番を考慮する必要があるかも知れません。
サンプル
三種類の音をつくってみました。
乱暴に言えば・・・①昔のクラプトン ②BBAの頃のジェフベック ③アメリカンロック(あくまで主観です)
使うエフェクトは「T-Scream(Ibanese TS808のモデリング)」「Governor(Marshall系歪み)」「Rc Boost(クリーンから軽いドライブまで)」「Z-Crean(Zoomオリジナルクリーンブースター)」「Booster(文字通りブースター)」です。
もちろん、これがベストということではなく、あくまで一例です。他にもたくさん歪み系のエフェクトが入っています。こういうものは主観と好みですから他にもっと良い組み合わせがあるかも知れません。とにかく単体で歪みを作るのではなく組み合わせでつくるのがポイントです。
こういう音は実際に弾く手応えというのも演奏するマインドに影響するので、ピッキングが思ったように気持ち良く音に反映する音を探すのが楽しくもあり難しくもあるところですね。また、アンプによっても違ってくるので大変です。サンプルはLogicの中のツイードアンプのクリーンでならしています。
さらに、歪み音を作るときには、ギターのボリュームを絞ったときに甘くなりすぎると困るので、絞ってもある程度しっかりした音がなってほしい。ブースターを入れるとその辺の問題がかなり改善されると思います。サンプルではGainはすべて50です。ですのでもっと歪ませることも歪みを減らすこともできます。
●Sample01:Nomal>何もエフェクトを通さない音です。ちょっと頼りない。
●Sample02:T-Screamのみ>悪くないですが・・・
●Sample03:T-Scream+Booster>2つ使うと音がしっかりします。
●Sample04:T-Scream+Booster+Z-Crean>3つ使うと音の粒が細かくなるような気がします。
●Sample05:T-Scream+Z-Crean>個人的にはこの組み合わせの方が好み。
●Sample06:Z-Creanのみ>これを噛ませると音がしっかりしてボリュームを絞ってもぼやけにくい気がします。真空管アンプのような音の立ち上がり方をします。
●Sample07:T-Scream+Z-Creanでギターのボリュームを1に
●Sample08:Governor+Z-Crean>T-Screamより少しゴツイ感じ?
●Sample09:Governor+Booster+Z-Crean>かなりヘビー。
●Sample10:Governor+Booster+Z-Creanでギターのボリュームを1に
●Sample11-01:RcBoost+Z-Creanでブルージー
歪み音ががっちり固まりすぎない「RcBoost」というのが黒人ブルースや70年代のアメリカンロックに合うのではないでしょうか。
●Sample11-02:RcBoost+Z-Creanでアメリカンロック?
●Sample11-03:RcBoost+Z-Creanでカントリーロック?
●Sample11-04:RcBoost+Z-Creanでボーリューム絞ってコード弾き
マルチストンプは、小さいながらひとつもっておけば、ドラえもんのポケット!