レジェンドは若くして老練する。「801 Live」サイモンフィリップスの衝撃。

ミュージシャン
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今さら紹介するまでもない、世界のトップドラマーの1人ですね。ロックドラマーのイメージですが、元々ジャズ畑だったそうで、トニーウイリアムスがアイドルだとか。フュージョン的なスタイルのソロアルバムでは、「トニーウイリアムスに捧ぐ」とサブタイトルがついているものがあります。

サイモンフィリップスの特徴

この人は、幅広いジャンル、幅広いスタイル、それぞれで優秀な点数を取る優等生でありながら、独特の個性もあるという最強のドラマーでもあります。
そういえば、その昔、手数王ドラマー故菅沼孝三さんのライブを見にいった際に雑談をさせていただく機会があったのですが、その時に「ドラマーにはスナップで叩く人と腕で叩く人の2種類がいる。しかし、サイモンフィリップスはどちらも使い分けることができる。これは最強や」と。また「10年前に一緒に演奏したときは、『こいつを抜いてやる』と思って頑張ったが、10年後に会ったときは、さらに先を行っていた」とも話されていました。

左右どちらでも叩けるオープン型スタイル。

サイモンフィリップスの特徴のひとつに、オープン型と言われるスタイルがあります。普通は右手でハイハット、左でスネアと叩きますが、サイモンフィリップスは逆です。そのため、ハイハットの位置を高くする必要がなく、スネアの面と同じくらいの高さになっています。それで前があくので、タムやシンバルに自由にアクセスできるというワケです。そのスタイルのため左右両利きだとも言われていますが、多分右利きなのでしょう。そういえば、ビリーコブハムもこのスタイルです。共にTAMAのドラムを使用していますが、なにか理由はあるのでしょうか。さらにどちらもマッチドグリップだしタムの配置も似ています。サイモンフィリップスがビリーコブハムを参考にしていると言うこともあるでしょうね。サイモンの作となっているジェフベックのSpace Boogieは、ビリーコブハムの「Spectrum」の中のQuadrant 4をヒントにしたとサイモン自身が語っていました。

初期の名演。


サイモンフィリップスは、1976年の「801 Live」が実質的なデビューと言われています。1978年ジェフベックがスタンリークラークと共に来日するときにドラマーとして参加していました。その翌年にはスタンリークラークバンドとしてLive Under The Skyに来日。さらにその後ジェフベックのアルバム「There And Back」に参加して一躍有名になったのではないかと思います。同じ頃にゲイリームーアやスタンリークラークなどのアルバムに参加しています。
ジェフベックは、サイモンフィリップスと最初に会ったときの感想を「ヤツがダブルキックのセットを積んでウチに来て、叩き出した瞬間にノックアウトされた」と話していました。

オクタパン

1979年頃は、24インチのバスドラムをノーミュートで使っていたという話があり、それを裏付けるように、Live Under The Skyの時は、バスドラが「カンカン」といった独特の音をしていました(FMでライブが放送された)。ただ1978年のジェフベック&スタンリークラークの時にはそれは感じませんでしたが。この頃、オクタパン(音階のついた長細いタム)を使っていたことでも話題になりました。Live Under The Sky、1980年のジェフベックのツアーでも8個並べていて、その独特の音をソロの時になどに効果的に使っていました。

サイモンフィリップスの演奏は、TOTOを始めいろんな人のアルバムで聞くことができますが、個人的にカッコ良いと思うのは、マイケルシェンカーのデビューアルバム「The Michael Schenker Group」、ジェフベックの「There And Back」、ゲイリームーアの「Back on the Streets」(ただしこれはドラムサウンドがイマイチ)、スティーブルカサーの「Candyman」、それとデビューだとされているブライアンイーノ&フィルマンザネラの「801 LIVE」です。

801Live

801は、ブライアンイーノやフィルマンザネラを中心に3公演だけのために結成された実験的なバンドで、Liveをミキサー出力から直接レコーディングするという手法の先駆けとなったとも言われています。
ちなみに、サイモンフィリップスはこのあとに発表されたフィルマンザネラのソロアルバム「リッスン・ナウ」でも叩いています。

「801 LIVE」当時、サイモンフィリップスは18歳だと言われていますが、カッコ良いツーバスや独特のフィルインなど、すでにサイモンフィリップスの個性が炸裂しています。サウンド自体もブライアンアインーノたちの独特の世界で1976年という時代を考えると先取りな感じです。今聞いてもカッコ良いです。
ちなみにこの中の「Sombre Reptiles」は、冨田勲の「新日本紀行のテーマ」にインスパイアされたのではないかということを知人が話していましたが、なるほどそんな気がします。曲調が似ています。世界の冨田ですからね。「801 LIVE」はサイモンファンにはぜひ聴いて欲しいアルバムです。


「801 LIVE」勝手気まま紹介

Lagrima〜T.N.K. (Tomorrow Never Comes)
ビートルズの名曲。1曲目からここへの流れがカッコ良い。ドラムが始まるともうサイモンフィリップスであることが分かるプレイ。最後にはツーバスの連打とサイモン節が満載。

East Of Asteroid
テンポの速い変拍子の曲で、16部音符で連打するツーバスなど高度なドラムが聞ける。複雑な曲を叩きこなす18歳。

Rongwrong
静寂の中に躍動感を感じる曲。

Sombre Reptiles
先にも書いたように冨田勲の名曲、NHKの「新日本紀行のテーマ」からインスパイアされたのではないかと思わせる日本的な曲調が漂う。

Baby’s On Fire
この曲もあまり目立ってはいないが、超絶激しいドラムを叩いている。

Diamond Head
ベンチャーズの同名曲とは別曲。8ビートの中で、3連符を入れる得意のフレーズが早くも登場している。

Miss Shapiro
普通の8ビートの曲だが、途中から16のハイハットが入ってくるが、こういう変化にも着実に対応して細かいプレイをしているのが凄い。

You Really Got Me
キンクスの名曲。こういう曲で、瞬間に細かいバスドラのロールのような連打を入れてくるのもすでにやっている。

Third Uncle
まったく新人ぽさを感じない、むしろ熟練すら感じるドラミングで、いやはや凄いなあと思います。ジェフベックのBlow By Blowのドラムも当時18歳のリチャードベイリー。このドラミングも若者とは思えない熟練を感じます。この熟れさは何でしょう。日本にも上手い若者はいっぱいいますが、この老練されたような感性は、やはり音楽文化の背景の違いなんでしょうか。


言わずと知れたジェフベックでのプレイはサイモンフィリップスの中でも名演のひとつなのではないでしょうか。高速の7/8拍子で展開するSpace Boogieは圧巻。
ゲーリームーアのソロ1枚目。後半は、ジェフベック的あるいはコロシアム2的なインストも多く、変拍子のFlight Of The Snow Moose、高速のHurricaneなど素晴らしいプレイが目白押しなのだけれど、なぜがドラムサウンドが今ひとつ柔い(個人的感想)のが惜しい。フィギュアスケートの羽生結弦で有名になったParisienne Walkwaysも収録。
マイケルシェンカーには少し軽いのではないかと思ったり(個人的感想)もしますが、全編カッコ良いドラムが聞けます。特にFeels Like A Good Thingのイントロは有名。 Into The Arena もサイモンフィリップスならではのカッコ良い3連。ドラムだけでなく、マイケルシェンカーのカッコ良いギターが堪能できる名盤。
ジェフポーカロの後任としてTOTOのメンバーとなったけれど、最初はTOTOファンには評判が良くなかった。しかし、その後のアルバムで納得したTOTOファンも多いそうです。軽井沢のイベントでジェフベックバンドとして参加したサイモンとゲストで参加したルカサーが仲良くなってルカサーのソロアルバムに参加し、その流れでTOTOにってなったんでしょうね。このアルバムでは、変拍子のインストの中でドラムソロもありサイモン節が堪能できます。
1978年にジェフベック&スタンリークラークバンドのメンバーとして来日した翌年、スタンリークラークバンドのメンバーとしてLive Under The Skyに来日。その後に発表されたのがこのアルバム。スタンリークラークという人は、ドジャズもやるけど、かなりロックなスピリットも持った人で、このアルバムでもロックスピリットあふれる演奏が聴けます。
上原ひろみは、もう日本人とかそう言う事は関係なく凄い。ジャズとかそう言うジャンルも越えて聴く人を惹きつけます。アンソニージャクソンというこれまた凄腕ベースと共にトリオでのサイモンフィリップスは、ロックでのそれとは違った味があります。元々ジャズミュージシャンだそうですしね。

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