70年代のヒットメーカー、カーペンターズの魅力。

ミュージシャン
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1970年代に活躍したカーペンターズは、昭和世代には青春の歌です。とにかくヒット曲がバンバン生まれたので、「ヒット曲を歌うアメリカの兄妹の歌手」という印象が強いと思います。しかし、一般的にはあまり意識されないかも知れませんが、演奏技術、作曲、アレンジの技術の高さが半端ではありません。特に意外なのが、カレンカーペンターのドラムの上手さは、知る人ぞ知る(ドラマーで知っている人は多いでしょうが)ところです。しかし、1983年にカレンが拒食症で亡くなってしまい実質的なカーペンターズの歴史は終わってしまいます(その後に未発表曲などは出ていますが)。カレンの死によって拒食症というものが世の中に認識されました。
当時は日本における海外アーチストのアルバムの売上げがビートルズに次いで2位だったそうです。とにかく、毎日、Top Of The World、Close To You、Yesterday Oce Moreなど、ラジオからカーペンターズのヒット曲が流れていました。

カレンカーペンターの歌、そしてドラム。

ドラムマガジンでもカレンのドラムを特集。

カレンは、とにかく歌声が唯一無二であり、その歌唱力も相まってボーカリストとしては、今でも人気ランキングの上位にあるのではないでしょうか。そしてあまりにも、歌が魅力的すぎてその影に隠されていますが、ドラマーとしての実力も相当高かったのです。ドラムも叩けるボーカリストというレベルではなく「歌も超上手いドラマー」と言っても過言ではありません。
カレンは、残念ながら若くして病死してしまいましたが、過去のコンサートの映像がYouTubeにあがっています。カレンのドラムコーナーもあって、その腕を披露していますが、高校性の頃マーチングバンドをやっていたそうでレギュラーグリップで抜群に上手いです。後期はバンドにはドラマーがいたようですが、初期のアルバムはかなりカレンが叩いていたようです。

とは言え、この人の歌声は特別です。似た人がいません。女性ボーカルとしては音域は低めだと思いますが、あのとろけるような声色で低音から高音まで滑らかにしっとりと歌う歌声は個性的ですが、カレンの歌が嫌いだと言う人はいないのではないでしょうか。音域が低いために、下の方のメロディーにいくと独特の太い低音の歌い回しがあり、それも魅力のひとつになっていると思います。一般的な女性ボーカルの人が、同じキイで歌うとその低音の辺りのメロディがしんどいという事があるかも知れません。

兄リチャードの才能&エレピ、歌

兄のリチャードの作曲&アレンジ力や演奏能力は、昔から評価が高く、そういう面で、兄妹の才能がうまく結集したデュオだったと言えます。カーペンターズは、アメリカのバンドらしく、カントリーをベースとしたサウンドが多いです。
大ヒットした「Top Of The World」のイントロのスチールギターは、カントリーならではのサウンドですが、あれほど印象的なスチールギターも他にないのではないでしょうか。スチールギターを説明するときに代表的な演奏として「Top Of The World」を上げる人も多いと思います。そして、その次にくるエレピも印象的です。このエレピも「Top Of The World」の印象をつくっています。

Wurlitzer


ロックミュージックでは、エレピと言えば「ローデス」(Rhodes:当時はフェンダー・ローデスだった)ですが、リチャードが弾いているのは主にウーリッツァ(Wurlitzer)です。ローデスよりも少し余韻が少ないコロコロした音色が特徴ですが、カーペンターズの演奏はこのピアノの音色が個性のひとつになっています(リチャードは、ローデスも使っていたようですが)。カーペンターズの演奏では、このエレピ、スチールギター、そしてカントリーフレイバーあふれるギターが多く登場します。それだけでなく管楽器も多く登場するのは学生時代から管楽器の仲間がいたというのも大きいようです。
そして、リチャードのコーラスもカーペンターズの重要な個性のひとつです。

凝ったコーラス

カーペンターズの魅力のひとつとして欠かせないのが凝ったコーラスです。単に3度や5度でつけるのではなく、テンションやカウンターメロディなど、主旋律の周りを縦横無尽に幾重にもコーラスが走ります。今のようにデジタル技術がない時代、しかもマルチトラックと言っても当時は8〜24チャンネルです(時代に従って増えていった)。今のように、それぞれのパートに1トラックを割り振れるわけではなく、複数パートを1トラックに入れたりダビングしなければならなかったので、バランスのコントロールが大変だったはずです。よく聞いているととんでもなく多くのパートがある曲もあります。今のように複数テイクを置いておくとか違うテイクをつぎはぎするということができなかった時代。しかも、アナログなのでダビングを繰り返すと確実にヒスノイズが増え、音質が劣化します。当時のエンジニアは、録音方式など、苦労しながら知恵を絞ったのだと思います。
このアナログの限られたトラック数の時代でもクイーンのボヘミアンラプソディを始め凝った多重録音を成功させている当時のミュージシャンは凄いなぁと思います。
カーペンターズのアルバムを聴くと、こういうコーラスやボーカルのオーバーダブがそこかしこにバンバン出てきます。そして、カレンとリチャードの歌声が、見事に融和して美しいハーモニーになっています。あまりに融和しすぎて、コピーしようとするとメロディが採りにくい。そのくらい一体化しています。

巧みなアレンジ

カーペンターズは、オリジナル曲と共にカバー曲も多く出しています。ビートルズ、バートバカラック、キャロルキングモータウンを始め、トラディショナルな歌など、しかしそのどれもが見事に独特のカーペンターズサウンドに料理されています。
ジャンバラヤなどは、トラディショナルをカーペンターズサウンドにして大ヒットした典型かも知れません。フルートから始まるイントロ、バックで流れるカントリーなエレキギター、そして歌に入るとスチールギターが入って軽快なカントリーになります。しかし、サビでは一気にコーラスがなだれ込んできてカーペンターズの世界が全開します。中間でフルートとギターのソロがありますが、それらも泥臭くなく軽快でポップで見事に曲の一部に溶け込んでいます。こういった料理のセンスが素晴らしいと思います。

高い演奏力

メドレーなどもたくさんあり、複雑な構成のメドレーをアルバムのままライブで完璧に演奏している動画もあり驚いてしまいます。中には個人的には凝り過ぎじゃないかと思うものもありますが、そのクオリティの高さにそういった感想も吹き飛んでしまいます。これだけ要素がたくさんあると、レーコーディングでのミックスダウンも悩むことも多かったのではないかと思いますが、できあがった作品はどれもスッキリした極上のポップスです。
ですから、曲の素材〜アレンジ〜演奏〜録音〜ミックスダウンという作業にどれだけのアイデアとエネルギーとセンスを必要としたのかを考えると本当に凄い才能だと思います。それを大衆受けするポップスの分野で成功させているのが本当に凄いです。

曲が良い、アレンジが良い、演奏が良い、そして歌が超素晴らしい。カーペンターズは、未だにポップス界の頂点にいるといっても過言ではないと思います。若い世代には、ぜひ聴いて欲しいアーチストです。


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不朽の名作、名演。現代でも色あせない極上ポップス。
カレンのドラミングが炸裂。これだけのパフォーマンスをしながらこれだけ叩けるというのは並大抵の実力ではないでしょう。
複雑なメドレーを口パクかと思うほど完璧に演奏。口パクかと思いきやアルバムと所々演奏とテンポが違う。
トラディショナルもカントリーフレイバーあふれるポップスに。
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