チャックベリーは、センスの固まり。

ミュージシャン
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昭和のロックギタリストで、チャックベリーの曲を演奏したことがないという人は居ないんじゃないかというくらい、ロックギターにとっては大きな存在です。
映画「Back To The Future-1」の中で、1955年にタイムスリップしたマーティが、まだ世に出ていないジョーニーBグッドを演奏し、さらにエディのタッピングまで披露する。それを聞いたバンドマネージャーがチャックに電話するというバラドックスが仕込まれていますが、現代に生きるマーティは、バンヘイレンに熱狂しチャックベリーも演奏できるというある面、その時代のギターキッズが象徴的に表現されています。

後の音楽に多大な影響を与えたチャックのスタイル

チャック・ベリー(Chuck Berry)は、エレキギターという楽器を弾きながら歌い踊る、パフォーマンスするということを初めて行った人ではないかと思います。ギターのリフや決めフレーズ、弾き方、動きなど、その後のロックに発展する要素をすべて兼ね備えていました。時代を考えるととてもユニークで、みんなを熱狂させたのが分かります。歌詞はリリカルで動きは面白く、ギターのフレーズはカッコ良く、今では当たり前になっていることの数々が、チャックベリーによって作り出されています。特にギターのリフや要所要所の決めフレーズ、間奏など、非常にセンスが良くて、それらは今聞いてもカッコイイです。歌詞もコミカルな落ちがあったり、それを表情豊かに茶目っ気たっぷりに歌います。
人気が出ないはずはありません。1950年代から1960年代にかけて数々のヒット曲を生み出し、彼の曲はエルビスプレスリー、ビートルズを始め、数えられないくらいのロックレジェンドにカバーされています。ジェフベックの代表曲のひとつ「Jeff’s Boogie」もチャックベリーの「Guitar Boogie」を発展させたものです。
「Johnny B. Goode」や「Roll Over Beethoven」、「Maybellene」、「Rock and Roll Music」など、なんらかどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。

偏屈な性格

ただ、それだけユニークなモノを産みだした人だけに、性格は相当変わって偏屈だったらしく、一緒にバンドをやるのは難しかったそうです。自分のバンドを持たなかった(持てなかった?)チャックは、あらゆる公演にギター1本を持って出かけ、プロモーターが用意した現地のバンドをバックに演奏したそうです。しかし、いつでも勝手に弾き出して「俺についてこい」みたいに始めるそうです。俺様の有名な曲を知らないはずがないだろう的な考えだったのかどうか分かりませんが、曲も告げずに演奏を始めるモノだからバックはついていくのに必死になり、やがて嫌気が差してきます。そして演奏をやめてしまったり怒り出したりでまともにコンサートができなかったそうです。そんな状況を見たキースリチャードが、チャックが60歳の時にチャックベリーのまともに演奏する姿が見たいと企画されたコンサートのドキュメンタリーが1987年製作の映画『チャック・ベリー / ヘイル・ヘイル・ロックンロール』。
この内容が、チャックの偏屈度が良く分かる内容で、良く分からないダメ出しを何度もキースに出し、しまいにキースもクラプトンも切れかけになります(笑)そして当日、散々リハーサルしたことと違うことを提案してくるという調子です。

1989年のできごと

この偏屈度を目の当たりにしたのが、1989年のキリンがスポンサーの音楽イベント、スティーブルカサーバンド、ニールショーンバンド、そしてジェフベックにスペシャルゲストとしてチャックベリーがラインナップされていました。
私は大阪城ホールで2日見たのですが、1日目、ジェフベックがステージを終えると、再び出てきて「チャックベリー!」と紹介。チャックは、スティーブルカサーバンド、ニールショーンバンドのメンバーをドラム、ベースに従えて登場。早速やり出すのですが、なんかムードがおかしい。チャックは1人で弾き歌っているのですが、バックのメンバーは、どんどん嫌な顔になっていき、しまいには退場してしまい、チャック1人が残され、良く分からないままにチャックのステージが終わったのでした。
一体何が起こったのだろう?今のは何だったのだろう?って感じで、目の前に起こっていることが理解できずあっけにとられてしまいました。チャックの歌もギターも憶えていません。とにかく、何かが起こっているのだろうけど何なのか良く分からない。そして、2日目、今度は改めて急いで調達されたバックバンド(日本人)とともにチャックが登場。数曲演奏したと思うのですが、昨日の今日なので未だ事態がつかめず、結局チャックの歌もギターも憶えていません(笑)後でチャックベリーという人はいつもあの調子なのだと聞き納得がいきました。その後に例の映画を見てな〜るほどとさらに納得したのですが、日本の主催者は、そのことを知らなかったのでしょうか?あるいはジェフベックや出演者たちは?・・・・・?とにかく、????の連続のできごとでした。

洗練されたセンス

例のドキュメンタリー映画

偏屈な困ったオッサンですが、若い頃から音楽を聴き続け耳が肥えるほどに、チャックベリーのセンスの良さを再認識します。リフの作り方やリフを弾きながら歌うスタイル。間奏の出だしのお決まりパターン、ダブルストップでのカッコ良いフィル、6度和音による間奏など、まだロックができる前の時代に、超かっこいいことばかり編み出しています。ダックウォークもそうです。本当にかっこよさの固まりだったのです。なので天狗になるのも分からなくない(笑)俺様が一番と思っていたでしょうが、それは否定できない。聞いたことがないと人は、チャックベリーヒット曲集みたいなのを聞いてみてください。おそらく聞いたことがある曲のオンパレードです。
「ダサカッコイ」という言葉がありますが、ある面、チャックのかっこよさは、ちょっと変なところなのです。funkyと似ていますね。funkyも語源は「臭い」という意味でそれを逆転してかっこよさの表現に使っています。最近で言う「ヤバイ!」と同じです。チャックの洗練度は、そのちょっと変な、変さ加減が独特で、かっこよさに転じているところなんじゃないかと思います。だから色あせないんじゃないでしょうか。


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