「マルチエフェクター」というモノが生まれて久しいです。しかし「良く分からない」と敬遠する人も多いようです。私もそうでした。単体のエフェクターは目で分かるしツマミを回せるし、こういうアナログは物理的にモノがあるので機械然としていて分かりやすいです。それに対して、マルチエフェクターは、機械ではなく回路あるいはソフトウエアって感じです。ひとつひとつが物理的に可視化されていないのでよくわからんのです。また、その昔は「音がイマイチ」とか評判も良くなかったし、「エフェクターはやっぱり単体で組まないと」というビンテージ思考というか、昭和志向?(笑)もあって、食わず嫌いという面もありました。しかし、実際に使ってみると利点は数多い。モデルへのこだわりではなく、欲しい音が得られたら良いという人には誠に便利なモノです。
荷物が軽くなる
ロックという音楽も生まれてから半世紀以上になり、リスナーもプレイヤーも高齢者もたくさんいます。そうなると、意外なことが負担になってきます。機材が重いことです。
エフェクターは、ひとつひとつは小さいけどずっしり重く、5個もつなげば結構な重さになります。セッションやライブが気軽にできる時代になりましたが、機材の運搬だけは、なかなか気軽にはなりません。カートにギターとエフェクターボードを乗せてコロコロ引っ張るのも階段や坂では結構重いですし、クルマで行ったとしてもそこからライブやセッションの会場までは運ばなければなりません。
そういうときにマルチエフェクターというのは便利なものです。よほど変わったもの以外はすべて入っていますから、何があるか分からないセッションでもマルチひとつもっていけば済むわけです。
もちろん、エフェクターへのこだわりの程度によって好みは分かれるでしょうが、上記の負担や面倒を考えるとマルチの利便性は相当価値があります。また、アンプ同様デジタル技術の進化とともに質が向上しているので、今やこだわるのにも十分な品質だと思います。ただし、マルチと言っても大型のはもちろん重いです。しかし、ロックの多くの演奏が大きなものは必要ないのではないでしょうか。
エクスプレッションペダルは別にがおすすめ。
例えばZOOMのG3nでも、エクスプレッションペダルが一緒になっているタイプと別になっているタイプがあるのですが、個人的におすすめは、「エクスプレッションペダルは別に買う」です。なぜなら、エクスプレッションペダルって毎回必要なものではないからです。不要なものを持ち歩くのは重いしムダです。また、ZOOMの場合だと、エクスプレッションペダルは他のモデルにも使えるので、買い換えたり買い足したりしたときも使えます。それとこのZOOMのエクスプレッションペダルが良いんです。質感とかデザインとか。
単純に楽しい
それともうひとつ楽しいのが、関係ないエフェクターもいろいろ試せる点です。興味のあるエフェクターを試したいとき単体ペダルの場合、楽器店まで行かなければ分かりませんが、マルチの場合ひととおり入っているので、いろいろ試せます。自分の発想になかったエフェクターも試してみると新しいアイデアが浮かんで楽しみが広がるということがあります。ちなみにZOOMのG3nには「有名ブティックペダルのモデリングを含む70種類のエフェクトを標準搭載」とあります。つまり一台で何役もするわけです。リズムマシンやルーパーなども備えているので、自宅で循環コードでのソロ練習などもできます。
高品質で便利
ひところは、「マルチエフェクターの音はイマイチだ」なども囁かれましたが、今やイマイチだというのはある種の偏見か先入観ではないかと思います。エフェクターによっては設定要素が簡素化されている場合はありますが、多ければよいというものでもありません。もうマルチエフェクターは、お徳用の域を越えています。
元になっているエフェクターとの差がどれほどあるかは分かりませんが、おそらくブラインドテストするとわからないのではないでしょうか。ちなみに、オクターバーで比較すると、私はジェフ・ベックも使っていたカラーサウンドのをもっていましたが、ZOOMのマルチに入っているオクターバーは、カラーサウンドのものに近いサウンドですが、性能はマルチ内蔵の方が良いです。
あと、エフェクター間のケーブルがない分ノイズも拾いにくいだろうと思います。そして、単体ペダルをボードにセットした場合、トラブルが起こると厄介です。どこでなにがトラブっているかを点検しなければいけません。そういう事からも解放されます。
とにかく、たくさんのエフェクターが内蔵されていて、選んでセッティングできるので、お手軽この上ありません。イマドキの事ですからパソコンに繋いで、画面上で設定ができたりもします。
モデルによっては、エフェクター単体のオンオフが不便だったりするものがありますが、その辺りは使い方次第というところがあると思います。ただ、設定はしないといけないので、そこに手間がかかるといえばかかりますし、アナログのように演奏中にちょっとツマミを回したりということができません。しかし、例えばZOOMのG3nなどでは、マルチでありながら設定したエフェクターのパラメーターを実機感覚でつまみで変えられるので即時変更も可能です。
マルチならではのできる事が、いくつものセッティングをバンクにいくつも登録できて、フットスイッチですぐに切り替えられることです。バンドごとは言うの及ばず、曲ごと、あるいは場合によっては曲の途中でも、瞬時に設定のチャンジが可能です。バッキングとソロで、まったく別のセットに変えることもできます。色んなタイプの曲があるポップスなどを演奏するバンドなどでは、便利なのではないでしょうか。このあたりのバンクの使い方が、マルチを上手に使うコツなのかもしれません。
メリット
●いろいろ一通りのエフェクターが内蔵されているお得感
●総合的に軽い(モデルによってはめちゃめちゃ軽いものもある)
●ノイズも少なくなる(ペダル間のケーブルがないので)
●トラブルが少ない(回路がソフトウエア)
●エフェクターのセット自体を瞬時に替えることができる。
デメリット
●設定が面倒(仕組みが良く分からない)
●即時変更がしにくい(ツマミがない)
●なかなか使いこなせない(仕組みが良く分からない)
つまるところ、良く分からないということでマルチを敬遠している人は多いのではないかと思います。よくわからんというのが正直なところではないでしょうか。それは、取説が分かりにくいというのもあるかもしれません。メーカーも努力されているでしょうが、「それ結局何にどう使うの?」というような機能があったり、便利な機能と書いてある内容がなにがどう便利なのか分からなかったりします。
しかし、こういうものは使い始めてみるとなんとなく分かってくるものです。モノは試しで始めてみてはいかがでしょうか。追ってZOOMのG3nの詳細や使い方の小技などをアップしていく予定です。
またJeff Beck Fan.netの方に「マルチでお手軽ジェフ・ベック」というコンテンツもありますので参考に見てみてください(使っているマルチは古いモデルですが)。
マルチストンプは、小さいながらひとつもっておけば、ドラえもんのポケット!