テレキャスター愛。

機材・装置
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最初に断っておきますと、この記事は独断と偏見に満ちたテレキャスター愛を語るわけですが、決してギターとしての優劣を言っているのではなく、あくまで好みの問題という域から出ない話ですので、よろしくお願いします(笑)

ギターを選ぶ意味。

そもそもギターは、極めて趣味性の高い、合理性経済性が入る余地のないものです。高額なギターだから高品質な音楽を演奏できるというようなものではありません。古いギターより現代のギターの方が、良い演奏ができるというものでもありません。所詮は弾き手次第です。

ただ、どのギターを選ぶかというのは弾き手のマインドに非常に影響するものです。もちろん、現代は昔より情報も多いし研究もなされ製造環境も進化していて、高品質なギターが生み出せます。しかし、だから昔のフェンダーのギターがだめかというとそうではないところが面白いところです。

テレキャスターというギターは、その中でも人気の高いギターなのではないでしょうか。「テレキャスター警察」という言葉もあるほど、改造されたものとオリジナル性の高いものとの差違を楽しむこだわりも見られます。オリジナルに強烈にこだわりながらも改造系にも喜ぶという(笑)ストラトキャスターは親切な優等生、テレキャスターはやんちゃだけど愛すべきヤツってかんじでしょうか。

初めてのソリッドギター。

テレキャスターは、世界で初めてのソリッドギター(空洞のないギター)と言われています。それまで、何らか中に空洞があるギターばかりだったのですが、ただの板にしたわけです。これらテレキャスターの始まりはその筋の情報源に任せるとして、その後のエレキギターは、ソリッドギターが圧倒的多数です。それだけでもテレキャスターの革新性が分かります。生まれて四半世紀たった今でも、基本設計は変わらず世界のギタリストが使っています。テレキャスターは、歴史的にカントリーのシーンで使われ始め、今でもカントリーミュージックの定番ギターですが、ロックでも、最近はジャズミュージシャンでもテレを使う人が増えました。そんなテレの魅力を考えてみました。

テレキャスターの偏愛

1.ただの板切れと棒からできている感
2.独特の音色
3.適合性の幅広さ
4.軽さ
5.頑丈さ

1.ただの板切れと棒からできている感

 実は無意識にこれによる魅力が全体を生んでいるのではないかというきもしますが、ギブソンのギターと違って、フェンダーのギターは、極端に言えば、平の板(ボディ)に削り出した棒(ネック)をボルトで留めて針金(弦)を貼っただけというなんともシンプルな構造です。ボルトで留めて組み立てているところなどが、職人が腕を掛けてつくる楽器というより「工業製品」っぽいです。なのにステキな音がする楽器だというギャップが、不良が素敵な音楽を奏でるロックのイメージと合っているのではないかという勝手な解釈ですが(笑)特にストラトはまだ、多機能だしボディも丸みを帯びていてデザインされた感じがありますが、テレは板を必要に従って切り抜いただけ感があります。
 しかし、だから改造も簡単だし、ネックやボディやマイクを替えていろいろなモデルが簡単にできてしまう。だからこそ、テレキャスター警察が活躍するのですが、テレキャスター警察もそういう犯罪者を見つけるのが楽しくて仕方がないという(笑)
 そういうおもちゃ的に楽しめるギターなのではないかと言う気がします。その割に、後述しますが非常に豊かなトーンを持っている。そんな鳶が鷹を生む的なちぐはぐさがテレキャスター(以下テレ)の魅力の土台になっているのではないのかなと思っています。

2.独特の音色

 これも、テレの大きな魅力です。そういう板と棒と針金みたいな構造、初めてのソリッドギターですが、今でもテレには独特の音があります。
 カントリーミュージックでは特にテレのリアマイクの音が「カントリーでのエレキギターの標準」的なところがあります。テレには、ハイパスフィルターがあり、ボリュームを絞ることで、その効果がでてきてある面パリパリキンキンの音なのですが、それこそがカントリーミュージックの音って感じです。
 これがテレ以外ではなかなか出ないのですね~。味です。ですから、カントリーの畑では圧倒的にテレ奏者が多いです。天才ダニー・ガットン、ビンス・ギル、ブレントメイソン(フェンダー製ではないですけど)、Youtubeでナッシュビルの演奏を見ると、大概がテレを持っています。
 また、テレは、フロントとリアでは違う種類のマイクがついています。理由はよく知りませんが、フロントのマイクもまた独特の音を持っていて、テレの個性になっています。さらに、セレクタースイッチを真ん中にするとフロント&リアのミックス音になりますが、この音がまたテレ独特なのですね。少しジャリッとしたようでどこかソフトで弾力性のあるような、しかし輪郭ははっきりしているという。
 この音が欲しいからテレを使うという人もいます。
 そして、これらの音がトーンポッドを回すことでものすごく変わります。レスポールやストラトの音とは違う、独特のこもった音になります。これもまたテレの魅力で、これに歪みの足し方を変えることでまた音が七変化します。元々の音が硬いために変化が出やすいのかも知れませんが、マイクの選択やボリューム、トーンの調整のあらゆるところで使える音があるというのがテレのもう一つの魅力です。

3.適合性の幅広さ

 カントリーはもとより、ロック、ポップス、ジャズまで、エレキで演奏する音楽には幅広く活躍します。もちろん、どんなギターでも使えば良いだけなのですが、そのハマり方と言うか、どこに入ってもテレなりのパフォーマンスができるということではないかと思います。
 ですから、セッションやなにかの演奏でなにがあるのかわからないときは、とりあえずテレを持っていけば大丈夫というところがあります。そういう面では、初めてギターを買うとき、迷ったらテレにしておけみたいなことも言えると思います。

4.軽さ

 基本的には軽いので楽というのもあります。最近は、若い女の子(子と呼ぶのだから若いだろう 笑)でテレを持っている人もよく見かけますね。軽さは結構重要なのです。レスポールなどは重い。肩がこります。軽いと取り回しも楽で、それが弾きやすさにも気持ちの上ではつながってきます。

5.頑丈さ

 1で板と棒で出来てると書きましたが、それだけに頑丈です。少々落としたりぶつけたりしても、塗装が剥がれる程度で壊れはしません。レスポールのようにヘッドに角度がついたものは、注意しないとヘッドがボキッと折れてしまいます。また、何らかボディやネックが破損したとしても、ボルトで留めてあるだけなので簡単に交換できます。
 このように、テレの魅力はとても奥深いのです。その割に素朴なところも魅力です。いろんなギターを持っていても、たまに弾きたくなる、そんなギターではないでしょうか。

テレのバリエーション

 構造が簡単なだけに、モデルも多いし、改造している人も多いわけです。モデルとしては、中に空洞を作ってハムバッキングにしたモデル(Thin Line)やマイクをリアだけにしたもの(Esquaire)などもあります。
 フェンダー以外のメーカーでもテレタイプは多数作られています。ブレントメイソンが使っているテレは、ヴァレーアーツ社のものでフェンダーライセンスでしたが、それがギブソン傘下だという良くわからないことになっていました(笑)ジャズ畑のマイク・スターンが使っているヤマハもテレを土台にした仕様ですね。

ハンバッカーを載せた「テレギブ」

 改造例などは、星の数ほどありますが、有名なのはジェフ・ベックが使っていた「テレギブ」です。セイモアダンカンが、テレキャスターにギブソンのハムバッカーを2つ載せたもので、ジェフベックにプレゼントされ、Blow By Blowの名演「Cause We ‘ve Ended As Lovers」はこれで弾いたという話です。

よく、テレのフロントはハムにした方が良いとか、リアにハムは合わないとかの意見が載っていますが、要はどんなサウンドになるか、それが好みかどうかだけの話しで、良し悪しではないと思います。
 一般論からすると「テレギブ」は、決して褒められた改造ではないということになります。しかし、あれはあれで良い音なのではないでしょうか。
 フェンダーで働いていたセイモアダンカンは、テレのThin Lineなどについているハンバッカーが嫌いだったと言っていて、ジェフベックにはギブソンのハンバッカーを弾かせたかったそうです(そもそもレスポールをプレゼントしたかったそうですが)。

3コマブリッジへのこだわり

 もうひとつ改造のポイントとして、ブリッジがあります。テレには、3コマタイプと6コマタイプのブリッジが存在し、オクターブ調整の制度を考えると6コマの方が良いはずなのですが、多くのテレ派はもともとのスタイルの「3コマタイプ」のブリッジを好みます。これは不思議ですが、2つのブリッジでは音が変わります。「3コマタイプ」でもさらにブラスタイプが好まれるようです。確かに音は変わります。よりテレっぽい音になります。不思議です。

テレキャスターが主人公?の映画「カーマイン・ストリート・ギター」

N.Y.の古い建物を壊した廃材でギターを制作している工房を舞台にしたドキュメンタリー映画。この工房で作っているのは、基本的にテレキャスタータイプ。いろいろなミュージシャンがたずねてきて、ギターを弾き語っていく。途中で、ウラにジェフ・ベックのサインがしてあるギターも登場します。この映画を見ると、またテレを弾きたくなる、そんな空気感とギターへの愛情あふれる映画です。

映画『カーマイン・ストリート・ギター』オフィシャルサイト
ルー・リード、ボブ・ディランも来店!ニューヨーク、グリニッジ・ヴィレッジにある「カーマイン・ストリート・ギター」では、NYの建物の廃材を使って世界のたったひとつのギターを生み出す。そんなユニークなお店と、有名ギタリストの演奏を堪能する、街と音楽に出逢うドキュメンタリー。 公開表記 8.10㈯より新宿シネマカリテ、シアタ...

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