2020年に癌で亡くなったギタリスト、エディバンヘイレン(Edward Van Halen)は、クラプトンやジェフベック、ジミーペイジ、ジミヘン以降の最後のギターの革命者ではないかと思います。
イングヴェイなども新境地を開きましたが、様式としての構築で、ギターという楽器に別の世界観を与えたという面ではエディの他にはまだ居ないのではないでしょうか。個人的には、ジェフベック以降、驚きを持って聞いた最後のギタリストです。
何これ?どうやって弾いてる?
デビューの「ユー・リアリー・ガット・ミー」を聞いたとき、「これ、なに?どうやって弾いてるの?」と本当に驚きました。
エディの凄いところは、単にタッピングという珍しいワザを取り入れているだけでなく、それをサウンド様式として構築している点です。
エディ以降、タッピングという技術は広まりましたが、未だにエディほどユニークなサウンドの世界観を作っている人は少ないのではないでしょうか。ある面クラシカルな音階感、ドライブ感、音色など、いろいろな要素があってエディのサウンドができています。タッピングだけを真似しても、エディのようにはなかなか弾けないはずです。
タッピングという奏法自体は、結構古くからあって40年代にアコースティックギターでタッピングをする人がいたそうですが、エディはそれをヒントにしたのではなく、何かで思いついたのではないでしょうか。
特にあのドライブ感は、バンヘイレンのバンド全体の個性としてもとても重要です。
タッピングだけではないバンヘイレンの魅力
バンドとしてのバンヘイレンの魅力は、エディのギターはもちろんですが、バンド全体の乾いた音、ドライブ感、そしてデビットリーロスのボーカルもバンヘイレンの重要な個性だと思います。このあたりは意見の分かれるところかも知れません。個人的にはサミーヘイガーは上手かったですが、もっとやんちゃでいい加減な感じ(笑)の歌の方が、構築的なバンヘイレンにあっていると思います。だから、エディのタッピングがなくても、バンヘイレンは充分に魅力的です。
同じアメリカンハードでもエアロスミスとは少し違う、エアロのように東海岸のバンドは、どこか湿りのある地下室的なムードがありますが、バンヘイレンやモントローズのような西海岸のバンドは、明るく乾いたサウンドです。不思議ですね、地域の空気がサウンドに出ています。
エディのギターサウンド
エディのギターというのは、研ぎ澄まされたようにシンプルでパワフルです。ブラウンサウンドと呼ばれるピーヴィーの5150の独特の歪みの音やその歪みのニュアンスを上手くコントロールするタッチもエディのギターの魅力です。
それとデビュー当時の、シャーベルを改造した「フランケンギター」も衝撃的でした。あのなんともロックで破壊的なデザインといい加減な作り(笑)最高にカッコよかったですね。
シャーベルも一気に有名になりました。マイクひとつにボリュームだけ(トーンコントロールがない)という割り切りもなるほどと思いました(マイク2つのもありますが)。フロイトローズのブリッジも一気に有名になりました。
奏法だけでなく、楽器としてのエレキギターにも革命的な価値観をもたらしました。つまり、これらがすべて一体となってあのエディのサウンドを作っていたということですね。
ジェフベックも「タッピングはエディのものだ。だれもエディのようには弾けない」と言っていました。
70年代にいろいろなアイデアが生まれて、もうエレキギターの奏法が極め尽くされたと思っていたところに登場したエディのサウンドは、まさに革命的でした。今やタッピングは、チョーキングやハーモニクスと同じくらい一般的な奏法になっています。
なお、両手でタッピングするスタンリージョーダンがエディにインスパイアされたかどうかは不明です。違うかも知れませんね。スタンリージョーダンのは、また違う方法論のような気がします。
<エピソード>
学生時代に行った来日アーチストのコンサートのアルバイトの仲間の話。彼はバンヘイレンの大阪公演の仕事に行った際にステージに置いてあるエディのギターに触れることができたそうで、思ったより弦高が高かったと言っていました。真実は不明(笑)
Les Paul Tribute Show, Aug 18th 1988