スライドギターだけではない、オールマンブラザーズバンドの魅力。

ミュージシャン
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ロック史におけるスライド奏法(ボトルネック奏法)の代表といえばデュアンオールマンではないかと思います。名盤「At Fillmore East」で聴かれるスライドは、分かりやすくパワフルでクリア、洗練されたスタイルで、黒人ブルースの泥臭いものとは明確に違っていました。歪ませて弦高を高くしたスライド専用のレスポールから出てくる音は、ハープに近い音色で、バンドの中での存在感が違っていました。高校性の頃に人から借りたレコードをかけて、1曲目のStatetsbolo Bluesのイントロが始まった途端に鳥肌が立つ感動を覚えた記憶があります。

バンドの誕生と個性

オールマンブラザーズバンドは、1970年代の初頭(正確には1969年)、つまりロック黎明期から活動をしていました。ブルースを基調にしながら、カントリーやジャズ的な要素を融合させた、いわゆるフュージョン的な演奏を当時から行っていました。そのあたりが、いわゆるブルースバンドと違って今でも古さを感じさせない普遍性があるのかも知れません。先のStatetsbolo Bluesのような純然たるブルースをやる一方で、In Memory of Elizabeth Reedのようなカリプソ風?のエレガントな曲も、何の違和感もなく演奏されていたりします。また、後に発表するJesscicaやRamblin’manのようなカントリー調の曲があったりします。世の中はまだまだブルースロック、ハードロック全盛の頃なので、そういう面で先取りというか、いわゆるロックバンドとは一線を画していたと思います。

メンバーの死

このバンドは、早くに主役であるデュアンオールマンがバイク事故で亡くなり、その後すぐにベーシストのベリーオークリーも同様の事故で亡くなるなど、不幸に見舞われます。その後、ディッキーベッツをメインにバンドを継続するも一度解散し、しばらくして再結成、再度解散など、メンバー頻繁に入れ替わります。最後の方には、ドラマーの甥であったデレクトラックスなども加わっていました。デレクトラックスは、まさにデュアンオールマンの再来と言われましたが、本当にその弾き方からタッチから、音楽性に至るまでデュアンオールマンの影響がありありと伺えます。Youtubeにデレクトラックスが少年の頃の演奏が上がっていましたが、まさに天才と言えるほどにすでに抜群の演奏力でした。
メンバーは入れ替わりましたが、グレッグオールマンだけはずっと存在していました。2014年頃から活動は行われておらず、その後メンバーの死やグレッグオールマン自身の死により事実上解散しています。デレクトラックスは、2014年以降にデレクトラックスバンド〜デテスキー・トラックスバンドで活動しています。

サウンド

ですからバンドにはいろいろな時代があり、それぞれに特色が違いますが、オールマンブラザーズと言えばやはり「At Fillmore East」それと「Eat A Peach」「Brothers & Sisters」なのではないでしょうか。この3枚にこのバンドのエキスが凝縮されているように思います。
面白いのは、デュアンのいる時、亡くなって以後では、ガラッと曲の傾向が変わっているのですが、しかし、オールマン色は変わりません。もちろんコンサートでは昔の曲の演奏していたし、デュアンの代わりにディッキーベッツがスライドギターを弾いていて、これも充分に上手かったので、遜色はありませんでしたが。オールマンサウンドの重要な部分を担っているのが、グレッグオールマンのオルガンではないかと思います。

グレッグオールマンのオルガンは、弾きまくるというのではなく、演奏の背景づくりのような感じで音色やレスリーの操作の方に神経が配られているような気がします。それとあの渋いボーカルですね。このオルガンとボーカルがあるとオールマンサウンドになるという感じがします。そういう面では、デュアンオールマン=オールマンブラザーズのような印象でしたが、そうでもないと言うことなのかもしれません。

とはいえ、その背景に乗っかるデュアンとディッキーという二人のギタリストのカラーが、うまく融合されているのもオールマンサウンドの魅力です。デュアンはブルース、ボトルネックというイメージが強いですが、Little MarthaやBlue Skyのようなカントリーフレイバーの演奏もします。アメリカ人ですからね。生まれながらに染みついているのだと思います。
ただ、カントリーフレイバーの強いディッキーにしてもデュアンにしても、カントリー調と言っても、ナッシュビルの凄腕ギタリストのように、超絶弾きまくりと言うような演奏はしません。
そのあたりも、そういうトラディショナルなものとは違うポップなロックを目指していたのでしょう。
そういう二人のツインリードもオールマンの魅力です。In Memory of Elizabeth ReedやHot Lantaのダイナミックなツインリードは気持ちイイです。

アルバム「Eat A Peach」は、デュアン存命期に録音されたものと違うものが混ざっています。「Brothers and Sisters」では、ディッキーベッツのカントリー寄りの個性が際立ってきます。これはこれで良いんですよね〜。Ramblin’ Man、Jessicaなどもオールマンブラザーズの代表曲です。ちなみに、当時から有名な話ですが、Jessicaのハーモニーのギターを弾いているのは、レスデューディックです。この人もまた特異な個性の人で、別に紹介したいと思っています。

レスデューディックにしてもオールマンにしても、またちょっと音楽性が違いますがオーリアンズにしても、早くからフュージョン的なサウンドをつくっていたのが興味深いところです。70年代後半からフュージョンという概念でジャズとロック、ポップスが融合したような音楽が流行りましたが、それ以前から彼らは、そういう要素を持っていました。ジャズやカントリーやいろいろな音楽があふれていたアメリカという土地柄なのでしょうか。ディッキーベッツのゴールドのレスポールがカッコよくて憧れました。
興味深いのは、カントリーフレイバーのバンドならテレキャスターを弾きそうなものですが、オールマンもアウトロウズやレーナードスキナード、38スペシャルなど南部のバンドは、みんなレスポールがメインです。

「At Fillmore East」
先ずこのジャケット写真にこのアルバムの空気やオールマンブラザーズの魅力がすべて凝縮されているように思います。カッコ良いですよね。ライブの迫力というか生演奏の良さが追体験できるアルバムも珍しいのではないかと思います。
「Eat a Peach」
デュアンオールマンの死前後に制作されたアルバムで、デュアンが弾いているものもあります。ライブテイクのものは、マウンテンジャムは、30分以上ある長い演奏でフィルモアイーストのライブの時の音源です。
「Brothers And Sisters」
デュアンの死後、ディッキーベッツを中心に活動開始した最初のアルバムです。Ramblin’Man、Jessicaなど、カントリー色の濃いこの時期のオールマンを代表する曲が入っています。

デュアンオールマンのボトルネック奏法

後先になってしまいましたが、デュアンのスライドプレーというのは、冒頭にも書いたように、それまでの黒人のスライドプレートは異なり、はっきりしていました。音が歪み、それによる倍音を活かし、ギターも弦高を高くしていたそうで、泥臭いブルースのスライドにある、バーがネックを擦る音がまったくありません。それは、ロウエルジョージやボニーレイット、あるいはジョニーウインターのスライドとも違います。デュアン独特のサウンドです。それを引き継いでいるのがデレクトラックスと言えるでしょう。言えるでしょうというか、オールマンファンならデレクトラックスが出てきたときに「デュアン、そのまんまやん!」と思ったのではないでしょうか。
ボトルもデュアンと同じ薬の瓶を使用しているそうで、右手のフィンガーピッキングもデュアンと同じように上から弦を押さえるような、ベーシストの様な弾き方です。ただ、ギターはレスポールではなくSGですね。デレクトラックスが登場してからSGが人気になりました。デレクトラックスは、音楽性が幅広いですが、デュアンオールマンも生きていたら、いろいろなスタイルを取り入れた個性的な音楽をやっていたでしょうね。

ツインドラムのグルーブ

もうひとつオールマンブラザーズの特徴としてツインドラムがあります。ツインドラムにする効果は、ドラムをパワフルにするというのではなく、2つのドラムの微妙なずれによる独特のグルーブが出ることです。これは私自身もツインドラムのバンドで演奏をしたことがあるので分かるのですが、2台のドラムの特にスネアが微妙にずれでフラムのようになったり、とにかく2台の違ったグルーブがひとつになってバンドを包む快感は独特です。
オールマンブラザーズのあの敷地面積が広いような音の空間は、ツインドラムの効果が大きいと思います。

今の時代でこれからオールマンのようなバンドが出てくるのか(すでに居るのか)分かりませんが、70年代の空気と共にいつ聴いても何らか新鮮なものを感じさせてくれます。メイコンのカラッとした空気と空と砂埃の匂い(行ったことないので知りませんが 笑)がスピーカーからイヤホンから押し寄せてきそうなオールマンサウンドは不滅ですね。


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デレクトラックスが在籍していた頃のオールマンの演奏。まさにデュアンがいるかのような抜群のスライドギター。
16ビートのタイトなリズムなどを多用し当時としてはかなり進んだフュージョンぽいスタイルで、カッコ良い曲がたくさんあります。都会的だけれども、どこかにカントリーのフレイバーが漂う独特のサウンドです。
In Memory of Elizabeth Reed デュアンオールマンが居るときの演奏です。こんな映像が居ながらにして見れるなんて良い時代ですね。

Hot Lanta デレクトラックス在籍時の演奏です。
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