ロックの中のラグタイムギター。

弾き方
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ラグタイムギターをご存じでしょうか。ギター1本でベース音を弾きながらメロディーも弾いてしまうといういわゆるソロギターですが「ラグタイム」なので、小気味よいリズムにのって弾くのが楽しいジャンルです。
カントリー系のギタリストを中心にラグタイム専門の人もいますが、エレキバンドのロックギタリストの中にもラグタイムが得意な人は多いです。ドゥービーブラザーズのパットシモンズ、スティーブモーズ、イエスのスティーブハウは、ラグタイムギターだけのアルバムもあります。またライクーダーもいます。

「Livin’ On The Fault Line: 運命の掟」
ドービーブラザーズが AOR的になって行った頃のアルバムで洗練された都会的なサウンドになっていますが、この中に1曲だけ「Larry the Logger Two-Step」(木こりのラリー)というとてもステキなラグタイムギターの曲があります。短い曲なので、練習曲には良いのではないでしょうか。

1人で完結するラグタイムギターは、忙しい社会人ギタリストのオアシス。

ラグタイムギターが面白いのは、ひとりで完結するところです。社会人になると、バンドを作ってもスケジュール調整が難しかったり、なかなか上手く活動できません。その点、ラグタイムギターは弾き語りのように1人で完結するのでメンバーがいなくても楽しいのです。
また、一朝一夕には弾けないので練習し甲斐もあります。さらにラグタイムギターをマスターすることで演奏の幅がとても広がります。一石三鳥です。忙しい社会人ギタリストにはうってつけの音楽だと思います。

ロックの中のラグタイムのスタイル。

アコースティックギターで演奏する場合が多いですがエレキの場合もあります。ライクーダーはストラトキャスターでも演奏するし、スティーブハウはスタインバーガーにコーラスをかけた音色で演奏したりします。アコースティックギターの場合、ラグタイムギタリストは小ぶりのマーチン000やOMなどが多いですが、普通のドレッドノートタイプで演奏している人もいますのでなんでも良いわけです。ライクーダーもマーチンD-45で演奏しています。

ラグタイムギターといえば、昔はステファングロスマンという人が有名で教則本も出ていたのですが、私は、どちらかというとそういうトラディショナルなラグタイムギターより、色んな奏法を混ぜて演奏するロックの人が演奏するモダンなラグタイムギターが好きです。

「Not Necessarily Acoustic」
Steve Howeは、ソロでラグタイムギターを含めたアコースティックギターのアルバムをたくさん出しています。このアルバムはライブのアルバムで、アコースティック、12弦、スタインバーガーなどを駆使したソロギターが満載です。The Clapも演奏しています。

Steve MoseがThe Clapをカバーしています。この人は、カントリー奏法(チッキンピッキン)もとても上手いです。カンサス州出身だからでしょうか。

マリアマルダーのアルバムの中でライクーダーが、歌のバックでラグタイム風のギターを弾いています。

ジェフベックもラグタイムスタイル。

私が好きになったきっかけは、ドゥービーブラザーズの「木こりのラリー」とスティーブハウの「The Clap」です。
特にスティーブハウは、カントリーだけでなくスパニッシュやクラシックなどいろいろな奏法をまぜこぜにして弾くので楽しいです。そういうごった煮状態の面白さや行き当たりばったりの即興性はジェフベックと似ています。
スティーブモーズは、「The Clap」をカバーしたりしています。ジェフベックはアルバムにこそ入っていませんが、DVDのギター紹介の時に少し弾いて見せていましたし、BBA Live In JapanのBlack Cat Mornの中で一瞬聴けますし、Jeff’s Boogieの後半でラグタイム的な演奏をしています。おそらく奏法的にもカントリー系のギタリストの方は何らかラグタイムを演奏できるのではないでしょうか(憶測ですが)。
日本でも中川イサトさんや打田十紀夫さん、最近だと山崎まさよしさんを始めラグタイムを演奏する人はたくさんいると思います。

ラグタイムとは。

ラグタイムとは19世紀末から20世紀初頭にアメリカで流行した音楽で、基本的にピアので演奏された音楽です。有名なのは、映画「スティング」のテーマとして使われたスコットジョプリンの「The Entertainer(映画)」でしょうね。「あー、あれか」と分かる方も多いのではないでしょうか。同じスコットジョプリンの「Maple Leaf Rug」もラグタイムの定番曲になっています。「Maple Leaf Rug」は、ロックのキイボード奏者としてパイオニアであるキースエマーソンもアルバムで演奏しています。冒頭にカントリー系のギタリストが得意だと書きましたが、ラグタイム自体は黒人音楽の影響で生まれたものです。

ラグタイムという言葉の起源。

Rug Timeの起源は諸説あるようですが、Rugというのは「ずれる」という意味です。マーチを演奏する音楽隊の行進で前と後で音がずれるのをモチーフにして生まれたという話もあるようです。田舎の酒場などのピアノでシンコペーションを強調して演奏することから「ずれる」感覚を楽しんでいたのではないでしょうか。

ラグタイムギターは、そういうピアノ演奏を見ていて「ギターでもやってみよう」となって生まれたのでしょうね。だから黒人音楽ではなくカントリー畑で広がったのだと思います。ただ、ラグタイムギターにはカントリーブルースの要素もあるので、その頃にいろいろな場面で融合し拡散していったのだと思います。さらに、カントリーだけでなくクラシックのギタリストがナイロン弦で弾くというスタイルもあります。というのも昔は楽譜に書かれた音楽をピアノで演奏するというスタイルが主流で、クラシックを学んだ音楽家達がダンスホールで演奏していたからです。だからラグタイム自体がクラシック的な要素を持っていると言えるのではないかと思います。

黒人音楽から影響を受けたと言ってもRag Timeの2拍子は、ジャズのスウィングとは別のノリです。2拍子はノリはカントリーに親和性が良かったのだと思います。ただまあ、このあたりの変遷にはネットで調べても諸説あるので、どれが本当なのかは分かりませんし、そんなに単純な進化はしていないと思います。あちこちでいろいろな影響を受けながらスタイルができていったのでしょう。


ラグタイムギター練習法

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